LHC再開のスケジュール

KEKの徳宿です。

先週・今週とCERNからプレスリリースが出て、LHC運転の再開スケジュールが更新されました。

2月の第1週に、CERN近辺で山岳観光地としても名高いシャモニー加速器の研究者が集まり、LHCの運転再開にむけていろいろな側面での議論が行われました。その結果を受けて2月9日に、CERNの新所長ロルフ-ディーター ホイヤー氏が最終決定を行いました。

昨年12月の理事会で示された予定では、「7月始めには加速器全体が再び冷却される」となっていましたが、それからは遅れ、今年の9 月末にLHC の最初のビームを出し、10 月後半に衝突をさせるという予定になりました。エネルギーは各ビームが5TeVで、つまり重心エネルギーは10TeVになると考えられます。(ただし、2番目のプレスリリースではこの数字は書かれていません。)

 予定を遅らせる主な要因は、昨年の9月のような事故が起こらないように監視装置を大幅に改善させるためと、万一事故が起こっても昨年のような大きな被害が起こらないように、圧力を下げるための安全バルブをたくさん設置するためです。既存の場所に安全バルブを増やすのは磁石を冷却した状態で行うことができます(第一段階)。これだけでも事故が起こった場合の被害を大きく軽減できます。ただし完璧にするためには、すべての双極磁石付近に安全バルブをつける必要があり、この作業のためには各セクターを一度室温に暖めなければいけないため、時間がかかります(第二段階)。2009年の秋までにはすべてのセクターで第一段階を行った上で、8つのセクターのうち4セクターには第二段階まで行うことにしています。

 ヨーロッパは冬に電気代が高くなるので、通常は冬には加速器を運転しないのですが、今年の冬は、クリスマスの期間にちょっと止めるだけで連続運転を行う予定にしています。これによって、いろいろな物理の結果を出すのに必要なデータを2010年末までにとれると期待しています。

 今回のスケジュールは安全性を最優先事項としつつ、できるだけ物理成果を早期に出せるようにと配慮をした計画といえます。

 詳しい内容はプレスリリース本文をご覧ください(プレスリリース1プレスリリース2)日本語訳をつけたバージョンもこちらからとれるようにしてあります。(訳1訳2)。

 実験をする側の私たちも、10月に向けて測定器を最良の状態に持って行くように調整をしていきます。また、実験が始まると1年近い長丁場になります。その間に加速器の性能がどんどん上がっていくと考えられますので、急に輝度が増えても、きちんと重要なデータを取りこぼすことがないように、きちんと計画を立てていかないといけません。