インターネットで生中継された実験開始の模様

神戸大学の松下です.

先日ニュースになったLHCの実験開始、日本に居た私はインターネットで実験開始の生中継を神戸大学の研究室で見ていました. 中継の様子をここに紹介します.

当日の LHC 制御室の様子. 若い人、女性も活躍しています.

陽子が LHC 加速器に 450 GeV で入射され 3.5TeV (3500GeV) に加速される前の、LHC の運転状況を示す画面.

目標の半分まで加速された時の画面. 半分のエネルギーに加速するまでに20分程掛かりました.


この頃、東京を訪れていた CERN 所長と CERN に居る記者団との間で会見が行われました. インドからはるばるやってきた来たという記者が、"この日の為に CERN に来たのだけれど、今日、これまでに2度加速に失敗している. 今回も衝突しなかったらどうするのか?" という質問がありました. それに対して所長は、"私が実験を通して学んだことの一つに忍耐がある. うまく行かなかったら、原因を突き止めてそれを改善してもう一度挑戦するだけだ、今日来て頂いた記者の方には申し訳ないが." と答えていました. その後、しばらく経って "3度目の正直"で めでたく目標のエネルギーまで加速されました. その当時の、LHC制御室と ALICE, ATLAS, CMS, LHCb 実験の各制御室の様子. どこも黒山の人だかりです.


加速した後、ビームの軌道を調整して衝突させます. 画面上の青い線と赤い線は、ATLAS、ALICE, CMS, LHCb の4実験の場所でのビームの軌道を示しています. 上の図では青い線と赤い線が離れていて、まだ衝突していません. 下の図では、青い線と赤い線が交差していて衝突が起こっています.

ビームの軌道調整後、CERN時間の 13:00 頃から、ATLAS実験でも1秒間に50回程度の衝突が観測されました. 衝突成功後、再び東京とCERNをつないで記者会見が行われました. CERN所長はワインで成功を祝っています. その後ろに、成功を喜ぶ日本グループの姿が見えます.

以上、当日の様子をお伝えしました.
生中継により、日本に居ながらにして、実験開始の興奮を味わうことができました. 既に、陽子と陽子の衝突により生成される粒子の解析が活発に行われています. 今後は、実験結果にご注目ください.