オーストリアのCERN脱退騒動

東大ICEPPの小林です。

この10日ほどの間に起こったオーストリアCERN脱退に関する顛末について
お知らせします。

5月7日に突然オーストリア科学大臣が、オーストリアCERNへの分担金を
打ち切るとの発表を行いました。これが国会および連邦大統領によって承認
されれば、2010年末でオーストリアCERNから脱退することになります。
理由は、オーストリアの国際研究予算の70%をCERNに使っているからという
ものですが、これはオーストリアの科学関係全予算の0.5%でしかないそうです。
また科学大臣は、素粒子物理分野の研究者の意見をまったく聞くことなく、
この決定を行ったとのことです。

Heuer CERN所長は、早速11日に科学大臣に会い、CERNにとどまるのが
オーストリア国益にかなうことであるし、これからLHC実験が始まると
いう時期に脱退すべきでない、と説得を試みました。同時にオーストリア
研究者による署名運動が開始され(http://sos.teilchen.at/index.html)、
1週間の間に世界中から約3万人の署名が集まりました。また多くの
ノーベル賞学者や各学会などから、科学大臣への抗議の手紙もよせられ
ました。

これらの結果、18日にオーストリアの連邦首相は、科学大臣の決定を覆し、
オーストリアCERNから脱退しないと発表しました。

私も先週CERNでこのニュースを聞き、オーストリアの友人達と連絡を
とりましたが、そのうちの2人から、今朝次のようなメールが届きました。

” ... We won...and will remain in CERN ... ”

” ... Thank you for your mail but, most of all, for the fabulous support
 the Austrian particle physics community obtained from the international
 community ! Please pass this on to your Japanese colleagues.

   We take this as a lesson about the importance of "outreach"
 and a lesson in civic initiatives. Most likely it is the web which allowed
 us to oppose a short sighted intrigue by the local "mighty ones" .... ”

署名に協力くださった日本の皆様、どうもありがとうございました。