ビームはなくとも ... ATLAS Shutdown & Recovery [4]

東大素粒子センターの 石野 です。

[3] の後の事の推移と、事が収束していく様子を書いてみます。

TGC1 <<>> MDT 間を 1.5m 開く決心をした。TGC1 <<>> TGC3 の間には約1,000本のケーブルが走っており、その大半を抜き去らないと物理的にWheel間は離れていかないため、とにかくケーブルを抜きまくった。6人が2日間続けて作業にあたり、なんとか、必要な800本のケーブル抜き取り、巻き上げ、固定が終了。みんな、お疲れ様。

TGC1をオレンジ色の台車で移動させる前日、Big Wheel のメカニカルデザイン責任者の Raphael と一緒に周囲をチェックする。彼は緩め忘れたボルトがないか、外し忘れた Big Wheel 間接続部品がないか気になっている。2対の目で一緒に見回るのは、お互いのためにも良かろう、ということで、入念にチェック。すると ... いきなり、あってはいけない場所を這っている冷却水チューブを発見。これでは Wheel が20cm移動した後、なんらかの事故がおこる。移動は明日で良い処理方法もないので、熱源となっている電源を全て落とし、冷却水をストップさせ、チューブそのものをカットして、急場を凌いだ。さらに他に、問題はないかチェックをし、1周したところでツアー終了。明日を迎えることにした。 が、やっぱり気になる。一人で、もう1周する。ちょっと病気。これで大丈夫と自分に言い聞かせる。でもまだ心配。

翌日朝、台車移動の責任者 Aboud , 前出の Raphael プラス、Big Wheel 周辺各地で点検をする我々 ~15名で簡単な打ち合わせをし、あらかじめ決めた配置へ行く。携帯電話を各自持ち、電話会議システムに各人接続、お互いの交信を確認したところでスタート! 1cm / 1min で進み、様子をチェック。これを10回繰り返した。特に問題なし。次は 2cm / 1min に速度を上げ10cm 一気に進もうとしていたその最中、Raphael がストップと叫んだ。ハイ、確かに処理されていないケーブルが1本ありました。このままだと、その線は引きちぎれてしまいます。よくぞ、見つけてくれました。感謝。その線を処理し、10cm 移動のセットを4回繰り返した。特に問題おこらず。10cm / 1min. に速度をあげ、最終目的地まで移動。特に問題起こらず。 1本、見逃しはあったが、結果オーライ、、、 

その後、MDT Wheel上のファイバー交換作業スタート。


小さなゴンドラに人が乗り込み、それをクレーンでつってもらい、目的地へ行って作業。終わると次の目的地へ。夜は作業したファイバーからデータが読み出せることをテスト。これを5日間繰り返す。まぁ、地味だが、重要な作業。これも予定通り終了し、目的達成!! 作業途中で検出器にゴンドラがぶちあたり、測定器が破壊される ... というような事も心配したが、問題なく作業は終了した。

翌日、TGC1 <<>> MDT間をクローズ、後、MDT <<>> TGC2 の間を開き、同様のファイバー交換作業をMDTの逆面について行い、その後クローズ。

その後、TGC1 <<>> TGC3 の間を走っていたケーブル 800本を元に戻す作業に取りかかる。6人、4日間程度、作業を続けて接続自体は復帰。更にテストパルスを用いて接続間違いがないかどうかの試験を続けた。数カ所、間違いをみつけたり、接続が甘かった場所も発見されたが、総じて一発合格、問題のあった数カ所も比較的短時間で問題の所在がわかり、必要な修正を施し、この大作業大会はひとまず終了。


2009年3月、同じことを A-side でやる予定。 まぁ、なんとかなるでしょ!?