ビームはなくとも ... ATLAS Shutdown & Recovery [3]

東大素粒子センターの 石野 です。

10/20 に Big Wheel の移動が終わり(黄色の矢印)、その次の週に End-cap トロイド磁石(緑色の矢印)、更に次の週の月曜日 11/03 に Small Wheel の移動(水色の矢印)を終え、下記の写真の様な配置になり、各所へのアクセスが可能になった。



写真には写っていないが、その更に内側に Calorimeter が存在しており、そいつもメインテナンスのために、数m 表側に引き出され、現在、電源関係のメインテナンスが進行中である。

Big Wheel は前に書いた通り、オレンジ色の台車にのって移動するが、他のブツはエアパレットと空圧シリンダーの組み合わせで移動する。緑色矢印の End-cap トロイド磁石は重量が240トンもあるが、移動する際の様子を見ていると、その質量を感じるのが難しい位 スムースに動いていく。

さて、ここまで書いたのはATLASのジュネーブ側で起こった出来事だが、逆サイドのアトラスジュラ側でも平行してシャットダウン作業が進められた。(どうでも良い話だが、ATLAS近傍でビーム軸は東西方向を向く。西側、東側と呼ぶのが普通だと思うが、実際にはジュラ側、ジュネーブ側という言い方をする。) 
 間抜けな話というのはあるモノで ... データを送信するためのファイバーが各所で用いられているが、とある検出器のファイバーの放射線耐性が不十分でATLASで3年使うと濁って使い物にならなくなる、という試験結果が1年程前に明らかになった。あろうことか、その間抜けな主は MDT Big Wheel で TGC に挟まれている検出器である。明らかになったタイミングは、インストールはすべて終わった後である。



MDT の内部にアクセスして、そのファイバーを交換するためには、TGC1-MDT の間をあけてやったり、MDT-TGC2 の間をあけてやらねばならない。しかしながら TGC1-TGC3 の間には1,000本のケーブルが引かれている。TGC1, 2, 3 の間のヒットコインシデンスを取るために、Wheel の間の橋渡しをするケーブルを這っている。TGC - MDT の間に人がアクセス出来るように ~1.5m の空間を作ってやるためには、これらのケーブルをほとんど抜く必要がある。可能性として、そういう事は想定していたが、あくまで可能性と思っていた。 が、いきなり、そんな機会に恵まれてしまった。

というわけで、せっかくここまでシステムを作り上げて来たのに、、、 せっかく 1st Beam で予定通りのタイミング性能 他が確かめられたのに、、、 大量のケーブルを抜くのか、と一瞬泣き言を言いたくもなったが、MDT が無ければ MUON がない、MUON がなければ物理も poor だ 。。。 と、納得し、人を配置し、システム破壊 = ケーブル抜きに取りかかった。