ビームはなくとも ... ATLAS Shutdown & Recovery [1]

東大素粒子センターの 石野 です

LHC 運転再開は 2009年の春 ? ... 果報は寝て待ちたいところだが、世の中、そう甘くはない。

9月下旬 ATLASコミッショニング with 宇宙線 
まず1ヶ月強の間、システムを崩すことなく、宇宙線を利用した測定器のコミッショニング、特に衝突点近傍に位置する、トラッカーを通過する宇宙線が降ってきたイベントをかき集めることにした。このプロジェクトは成功を収め 9/13 から 10/26 の間に 220Million イベントものデータを記録した。


もちろん、我らが TGC宇宙線到来のタイミングを測定器システム全体に告げるトリガーを発行する重要な役割を担い、システム全体のコミッショニングに大きな貢献をした。トリガーは重要なんです。 ( No good trigger ? , throw garbage away !! ) 

10月下旬 ATLAS解体 for メインテナンス開始
ここまでは 各サブシステムの目的が良い精度で同じ方向を向くため、話は単純である。大変なのは この後で、上記アクティヴィティーと平行して6ヶ月のシャットダウン期間をいかに有効利用するか、ディスカッションを戦わせた。

 アトラス測定器は約10種類の検出器の総合体であり、我らが TGC 検出器も One of them である。どの sub-system も重要であり、何が欠けても目指す物理に支障がもたらされる。それは皆、知っている。しかしながら、その一方で10年つきあってきた 我が検出器は1番かわいい、そして、常に完璧な姿で、理想通り、稼働して欲しいと思っている。1st Beam や 宇宙線を利用して取得した大量のデータは、各サブシステムに何らかの不具合箇所があることも示唆する。普段、公衆の面前では口にしないが、コーヒー飲みつつそそのかすと、皆、自分のシステムが抱える心配事を語りはじめる。(持病を語り出すと止まらない という人がいるが ... ちょっとアレを思い出す。)

そして、このシャットダウン期間は その手の心配事をクリーンアップするチャンス! である。十分な作業時間が欲しい、マンパワーが欲しい、なるべく早いタイミングで修理して長期間のテストをしたい、 ... etc. etc. もう、皆、わがままいっぱいになる。良い環境、良い条件を得るためには、他のサブシステムのことなど眼中になくなる。特に今回は、1st beam の前後を含んで、約3ヶ月位、状態確保、現状維持という強い制限がかかった後でもあり、皆のわがまま度は かなり高かった様な気がする。すったもんだの末、テクニカルコーディネーションの強いリーダーシップにも助けられ、議論は収束。4月頃までのアトラス解体、復帰シナリオは完成し、10/20 最初のパーツ、TGC を含む Big-Wheel A-side がメインテナンスポジションへ移動を開始した。