LHCの運転に関して


 KEK徳宿です。

 森田さんの投稿にあったように、CERNは10月23日にプレスリリースを行い、ビームによるLHCのコミッショニングの再開は来年となりました。

LHC加速器は複雑なシステムで、使われている電磁石の総数を数えると約9500台にもなります。非常に注意深いテストを経て設置されており、9月10日にはビームの入射テストをはじめて1時間以内に周回を成功させることができ、その技術の高さを示しました。
 
 今回、磁石関連で残念なトラブルが起こってしまったわけですが、このような大きなシステムの立ち上げでは、日々いろいろなことが起こるもので、一つ一つ問題点を解決していかなくてはいけないものです。超伝導磁石は摂氏マイナス271度以下に冷却して使っているので、調査のために常温に戻すのにも数週間かかってしまいます。重要なのは、今回原因をよく解明して、同じようなトラブルが起こらないようにきちんと対策を立てることです。

数か月の遅延は実験スタートを持ちに待っている私たちにとっても残念ですが、建設開始から14年かかっているわけですので、ここは多少時間をかけても対策をしっかり検討してもらいたいと思っております。
 
 私たち実験グループも、この時間を利用して宇宙線などを使ったテストを進め、問題点を発見したら対策をたてて、ビーム衝突開始に向けて測定器を良い状態に保っていきます。