LHCの運転再開は来年春に

KEK広報の森田です。

トンネル内に大量のヘリウムが漏出して運転が停止しているLHCですが、CERNから再度プレスリリースがあり、運転再開は来年の春以降になるとの見通しが発表されました。

http://press.web.cern.ch/press/PressReleases/Releases2008/PR10.08E.html

日本語の仮翻訳を載せておきます。

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LHC再稼動は2009年の予定

ジュネーブ、 2008年9月23日。 大型ハドロン衝突型加速器LHC)のセクター3・4のトンネル内で発生した大規模なヘリウム漏れについて、CERN(注1)で引き続き調査した結果、トラブルの主な原因は、加速器の2つの超伝導磁石の間の電気的接続の欠陥を示唆していた。しかし、事故発生要因の完全解明にあたっては、まず同セクターを室温まで戻し、中の超伝導磁石を検証のために分解しなければならず、3?4週間を要する。詳細な本調査はそれが終わってから可能となる。

「9月10日のLHC運転開始で大成功を収めた直後の事故だけに、精神的ダメージであることは間違いない」とR. Aymar CERN所長は語る。「しかしながら、LHCのファーストビーム入射成功は、何年にもわたる綿密な準備と、CERN加速器複合施設の建設・運転に携わるチームの技術の証だ。我々はそれと同様の厳格さと応用力をもって今回の痛手を克服できると信じている。」

調査と修復に必要な時間について、CERNの冬の定期メンテナンス期間より前の再開は不可能なため、加速器複合施設の再開は2009年春、LHCビーム入射はその後となる見通し。

LHCのような粒子加速器は独自の機械で、最先端後術を駆使して建設される。それぞれの加速器がそれ自体プロトタイプであるがゆえ、運転開始期に初期的な問題発生はつきものと言える。

LHCは非常に複雑な装置であり、大規模かつ多くの分野で技術の粋を尽くしている。」世界初の大型超伝導加速器である米国フェルミ国立研究所のテバトロンのコミッショニング責任者であったP. Limonは言う。「特に運転初期には、発生するイベントが時に短期間または長期間、一時的な運転停止を引き起こすことがある。」

1992年?2007年に稼動した超伝導粒子加速器HERAを持つドイツDESYなど、いくつかの研究機関からCERNに対し、同様の助言が届いた。

「我々DESYは多大な熱意をもってLHCのコミッショニングに携わってきており、初回ビーム入射日の成功には大変感動した。」A.Wagner DESY所長が語る。「私はCERNの仲間たちがこの問題を速やかに解決すると確信している。DESYは引き続き、彼らに出来る限り協力するつもりだ。」

<注1> 欧州原子核研究機構孝(CERN)は、素粒子物理学において世界を先導する研究機関であり、ジュネーブに本拠を置く。現在のメンバー国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリアチェコデンマークフィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェーポーランドポルトガルスロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス。オブザーバ国(機関)は、インド、イスラエル、日本、ロシア、アメリカ、トルコ、欧州委員会ユネスコ

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