LHC加速器のトラブルについて

KEK広報の森田です。

石野さんの記事や海外の報道ですでに話題になっていますが、LHC加速器が現在運転を停止しています。

CERNのプレスリリースによると、9月20日にビーム無しの状態で5TeV運転時の状態まで超伝導磁石を励磁した際に、セクター34と呼ばれるエリア(石野さんの記事参照)でトンネル内に大量のヘリウムガスが漏れ出したとのこと。このトラブルによる人身事故や環境への影響はありません。

詳細は現在CERNで調査中ですが、考えられる要因としては、二つの超伝導磁石を接続する電源ケーブルの接続不良の可能性があるとのこと。故障箇所が液体ヘリウムで冷やされた極低温の場所であるため、リング8分の1周(約3km)の超伝導磁石をいったん常温に戻して原因を調査し、修理してからまた極低温に戻す必要があり、プレスリリースでは「LHCの運転再開には最低2ヶ月を要する」とあります。

アトラス日本グループの代表の一人の徳宿教授は

・最低2ヶ月の遅れはたいへん残念であるが、今回のトラブルはLHCのような大きな複雑な加速器システムの立ち上げでは起こりえる。
・プレスリリースの最後に書いてあるように、修理には時間はかかるが、加速器グループは必ず問題を解決し、回復すると考えている。
・来年早々に予定されている14TeVでの衝突実験に大きな遅れが波及しないことを祈っている。
・アトラス測定器はこの週末も順調に検出器の動作試験を行っている。来週早々に事態がもっと明らかになり次第、アトラスグループとしての中長期的なスケジュールを検討する。

と述べています。

詳報が入り次第、このブログでもお伝えします。